トピックス


玄葉&田部井





なお、この内容は“げんば光一郎”の2003年版リーフレットに掲載されたものです。


 

 

 



玄 葉
: 最近「ニッポン東京スローフード協会」の会長に就任されましたね。
小 泉 :スローフードというのは、ふだん漠然と口にしている食べ物を、もう一度じっくり見つめ直してみてはどうか、という提案です。世界の栄養学者が集まって、いろいろな食事を研究したことがありました。その結果、世界で一番すばらしい食をもっている民族は日本人だったそうです。その理由は「カロリーの取り方が理想的」「栄養バランスがきめ細かく整っている」「健康的である」という3つです。これほどすばらしい食文化をもっているのに、どうして最近の日本の若い人はヘンにアメリカナイズされたおかしな食事をしているのかと、不思議がられましたよ。しかも食が変わってしまったことによって、日本の若者にしかない病気が増えています。腸に穴が空く、精子の数が減る、すぐにキレる・・・
玄 葉 : その意味では「地産地消」というのも重要なキーワード。先日、ある農協団体の会合に出席したら、今年度の運動方針に地産地消が掲げられていました。それなのに、その会合で出されたミネラルウォーターはフランスからの輸入品でした。

小 泉
: (笑)
玄 葉 :まだ言葉が先行している段階です。実践したいですね。その土地でとれたものを、その土地ならではの方法で食べる。買い物もその土地の商店でする。これを徹底した時の地域経済への波及効果は意外に大きいはずです。

                      

小 泉 : 「地産地消」にはいくつものメリットがあります。「安全・安心・おいしさが保証される」ということ、「自給率が上がる」ということ、「農家が活性化する」ひいては「街も豊かになる」つまり「地産地消」とは「地域経済循環システム」そのものなのです。

        

玄 葉 : それを学校給食から始めるべきだと思います。地元の食材を徹底して給食に使っていく。そうすれば学校から子供へ、子供から親へ、親から地域へと地産地消の動きが広がっていきます。ある医師グループの研究レポートによれば、すぐにキレる子供たちの食生活には一定の傾向があり、一人きりで食事をする「孤食」、冷めたものばかりを食べる「冷食」、1日3回の食事をきちんととらない「欠食」が顕著だったそうです。食と家族のあり様は教育と結びついています。
小 泉 : まさしくそのとおりですね。これからの時代、子供たちの食育教育というとすぐ目の前の食べ物のことだと考える人が多いですが、本当の食育教育というのは、食べ物の前に土があり、農があることを教えることです。また、食べるということを通じて礼儀作法や祖先を敬う気持ち、恥ずかしさってなんだろうというようなことを教えていけば、これは一生その人のものになるわけです。そういう目に見えないことを教えていくことが本当の食育教育なのです。
玄 葉 : 文明の衰退は農村の衰退からはじまります。地方の衰退が日本に元気がない理由ですね。
小 泉 : 「地方の時代」と言われ続けていますが、これからは本当の意味で地方の時代がやってきますよ。具体的には農家の活性化です。農家が強くなり、その購買力の向上を受けて、地域経済も活性化していく。これが地方の時代のビジョンだと思います。

                  

小 泉 : 玄葉さん、政治に対して注文があります。例えば、北海道は人口569万人で毎年3000億円くらいの赤字で、累積赤字が4兆円にも達しています。それに大してフィンランドは人口520万人で毎年2兆円の黒字を生み出しています。この差に日本の政治の貧困さが現れています。いかに予算がムダに使われているのかということです。
玄 葉 : 第一に予算のムダ使いは確かにあります。特に税金をオバケのようにムシャムシャ食べてしまうのが族議員と呼ばれる人たちです。国益より自分達の権益を守り、天下り先を守っている。第二に、私の従来からの持論ですが、大胆な分権改革がどうしても必要です。おっしゃるとおり、フィンランドは520万人、隣のノルウェーは455万人で各々立派に国家経営をしています。北海道でもできないはずはありません。

玄 葉
: 実は現在の日本の政府が行なっていることの大半は、都道府県でできる仕事なんです。権限と財源を大胆に地方に渡せば、各地域の潜在力の蓋(フタ)が開きます。今は潜在力に蓋をしてしまっている。その蓋を開けるのを邪魔するのはやはり族議員です。なぜなら分権されると自分達の権限がなくなってしまうからです。まず、族議員というオバケを退治しなければなりません。そして分権改革で地方から元気にしていかないと。
小 泉 : まさに地方の時代を始めないと。私も福島県の出身ですが、この県は農家も多く、自然も豊かで、これからこの国を救うことになるエリアかもしれません。しっかりした食育教育や農業も含め、素晴らしい可能性を秘めている県だと思いますよ。
玄 葉 : そうですね、私たちのふるさと、福島県をより豊かにする。特に農業活性化という点で、一緒に具体的なプロジェクトを進めていきましょう。ぜひ、力をお貸しください。
              
小 泉 : わかりました。期待していますよ。





小泉武夫先生小泉武夫プロフィール


1943年福島県小野町の酒造家にうまれる。1966年東京農業大学農学部卒業。現在、東京農業大学教授、NHK放送番組審議会委員、ニッポン東京スローフード協会会長。農学博士。専攻は、醸造学、発酵学。






←
前ページへ