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政策座談会「公選法の前面見直しに向けて」


【出席者】

逢沢一郎・自民党幹事長代理

玄葉光一郎・民主党幹事長代理

飯尾 潤・政策研究大学院大学教授(21世紀臨調主査)

=順不同、文中敬称略

 

【前文】

「政権公約」(マニフェスト)選挙を提言・主導して来た21世紀臨調と自民、民主、公明の国会議員有志が近く、公職選挙法を全面的に見直す共同研究会を発足させる。1950年に制定された現行法は選挙活動を細かく規制する「べからず法」になっており、ネット社会が進展する現代にそぐわないとの批判が候補者と有権者双方から出ている。研究会の本格的な議論を前に、どのような見直し論点があるのかについて自民、民主両党の代表者と学識者に語ってもらった。
(司会 本誌・名和興一)



――現在の公職選挙法が半世紀以上前に制定されたもので、その間に社会や国民意識が変化し、この法律は時代遅れではないかといわれ始めています。どのような認識を持っていますか。

逢沢 戦後60年がたち少子高齢化が進み人口減少時代を迎えつつあります。国民の政治への期待は大きく変わり、政治の良し悪しが国民生活を直撃する時代です。衆議院は小選挙区制をベースに4回の総選挙を経験しましたが、政党中心の政策本位の選挙実現に試行錯誤しています。現行法の下で政治家、候補者の思いが国民にどれほど伝わっているのか、政党のマニフェストがどれだけ国民に理解し吟味していただいているのか。公選法を一度ゼロベースで見直すために検証してみる時代になったのではないかと思っています。

――野党の民主党としてはどう思いますか。

玄葉 公選法が出来た1950年当時のイデオロギーを選択する時代から、今は政権選択というか政策選択というか、選挙そのものが変わってきています。政権選択をする時代に現行の公選法が適切かどうかについて、同じようにゼロベースで考え直そうではないかと思っています。

――学者の立場からどのように考えますか。

飯尾 何かをしないといけない時期だと思います。実は公選法は憲法とは違って何度も改正されているのです。ここに穴があるというと少しずつ手を入れてきて、その結果分かりにくい法律になってしまっているのです。化石時代のアンモナイトという生物はどんどん複雑に進化していって、ついには生きていけなくなってしまったというではありませんか。このままのペースでいじっていったら公選法は化石になってしまいます。もう一つの問題は、改正を何度もしているうちに他の国とはずいぶん違う選挙法になってしまっていることです。日本だけにしかない規制が山ほどあるのに、日本人はそれが選挙法だと思い込んでしまっているのです。全面見直しというのは大変ですが、すべての政党と有権者が参加して一部分の手直しではなく、公選法をどのようにすべきかきちんと議論することが必要になってきました。

――有権者にとっても都合の悪い法律になっていると。

飯尾 有権者がもっと知りたいという素朴な疑問に答えるよりも、選挙運動をする側の都合で作られてきた面があります。公選法が政治業界の業法になってしまっているのです。業界の秩序を維持し新規参入を規制する政治家にしか分からないような法律になってしまっている。また、地方分権が進んできている時代において、地方と国政の選挙を同じ法律で行うのもおかしい。そもそもこの法律が出来た当初は、政党や政策本位の選挙を想定していないので、政策よりも候補者の経歴を重視する仕組みになっています。

――与野党とも公選法の全面見直しには賛成するのですか。

玄葉 少なくてもこの二人は。でもこれから議論していきます。

逢沢 自民党の政調会や選挙制度調査会で意思決定したとかいう段階ではありません。現職の立場としては今の公選法を守っていかなくてはならないが、もっと上のところから見て問題提起していけたらと思います。

玄葉 飯尾先生が言ったように、政治家の都合に合わせた法律になっている面は否めないと思います。有権者側からみるとどうなのか、国民の政治参加も含めた全般的な見直し議論をしてみたいと思っています。

逢沢 つまり政治をよくする、あるいは民主主義を後押しするような法律の仕組みになっているのかという視点から議論したいと思います。能力があり志がある人が政治に参加でき、政党も切磋琢磨し成長していけるのかという角度からの検証が必要なのではないではしょうか。

――10年前の改革で政策本位の選挙制度に変えたはずですが。

玄葉 昨年の小選挙区比例代表並立制での4回目の総選挙で、初めて国民は本格的に政権選択、首相を選ぶのだという意識で投票したのではないでしょうか。そのような意識は徐々に定着してきているのです。しかし公選法の規定がそれに追いついていないのです。まだ党のマニフェストの配布に制限があり、自由に政策討論会を開けない。業法という話が出ましたが、政治家にすら分からない法律になっています。

逢沢 現行の選挙制度になって、確かに後援会活動も含め費用の面ではずいぶん改善されています。自民か民主かという政権選択の状況も出来つつあります。昨年の総選挙では、郵政民営化に賛成か反対という小選挙区らしい分かりやすい選挙でしたが、政策全体のパッケージを評価していただくのが本来のマニフェスト選挙でしょう。第三者的な言い方をすれば、そのように政治が進化していかなくてはならないと思います。

――小選挙区制ではわずかな得票率の差が大きな議席数の差を生みますが、選挙制度を中選挙区制に戻すような議論にはならないと。

玄葉 民主党は昨年の総選挙では敗れましたが、政権選択の選挙になったことはいいことだったと思います。確かに小選挙区の議席でみると、自民党は得票数では民主党の1・3倍だが議席数は4倍にも獲得した。しかし逆にいえばわが方にもチャンスがあるわけですから、政権を取るための大事なプロセスです。

飯尾 小選挙区制がようやく定着してきた段階ですから、中選挙区制に戻すような議論はないでしょう。それよりも参議院の選挙制度が今のままでいいのかという議論のほうが必要です。自民党が今、衆議院の選挙制度をいじるのはまさに勝ち逃げです。議席数は本質的な問題ではないと思います。中選挙区制では政権交代が起きにくい。小選挙区制だから野党も何とか勝とうとする。試合は10対1でも6対5でも勝ちは勝ちですから。

――選挙運動のもっと自由にするという議論が中心になりますか。日常が選挙活動だという考えもあるようですが。

逢沢 政治を前進させるためにどのようなルールが必要かという視点からの議論をしたいですね。衆議院の選挙期間は12日間ですが、公示前日までが後援会活動で12日間だけ選挙運動期間というのも考えてみればおかしいですよね。実態は解散されたその日から選挙ですよ。メールマガジンは公示前日までならいい、ホームページは選挙期間中は更新してはならないという規制はいかがなものでしょうか。

玄葉 現行の事前運動の禁止は何の意味があるでしょうね。12日間で政党の政策や候補者の人格が分かるのでしょうか。厳密に判断すれば日常の後援会活動は事前運動禁止に抵触しかねません。また個別訪問禁止もナンセンスです。その理由は買収の温床になると説明されていますが、今時、1軒ずつ回って買収する候補者なんていませんよ。




飯尾
 外国で選挙運動期間を設けている国はありません。選挙運動期間の設定が日本の公選法の最大の特徴なのです。なぜ外国は設けていないかというと、そもそも政治活動と選挙運動を厳密には区別できないからです。期間を設定するから特別な制限をすることが可能になるのです。公選法にはちょうちんや看板の大きさまで定められている。規制緩和の問題で仕様基準か性能基準かという議論があります。看板の大きさを決めるなどの行為を規制するのが仕様基準で、公正な選挙を行うことができれば、一定の限度はあるでしょうが、特別な制限をしないというのが性能基準です。今の公選法は性悪説に則っており、性善説にするコペルニクス的な発想の転換が必要です。

――インターネットの普及が選挙運動を変えて行きますか。

逢沢 お金をあまりかけずに多くの人に政策を伝達できるわけですから、われわれは大変なツールを手にしたと思います。パソコンを使わない人は少なくなってきています。さきほども言いましたが、メールマガジンやホームページの利用も含め、技術的な問題もあり簡単ではないでしょうが、インターネット社会を迎えて政策や政党のマニフェストを有権者と双方向でやり取りできるように出来ないか、自民党内でも研究を進めています。

玄葉 国民、有権者にとって何がいいのかから考えることが大事です。ホームページの更新の規制などはなくすべきです。将来は投票所に行かなくてもメールなどで投票できるようなことも検討対象になるかもしれません。いずれにしても議論を進めていけば公選法の手直し程度では整合性がつかなくなります。現職の議員にとっては、自分が当選してきた現行法を抜本的な見直すことには抵抗があるかもしれませんが、ヤセ我慢してでも改正すべきです。