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ソフィア会寄附講座第5回


「政界の仕事を語る」
 


 
みなさん、こんにちは。玄葉光一郎といいます。いま衆議院議員4期目で、ちょうど40歳になります。私の場合、仕事といってもちょっと特殊かなあとは思いますが、一つでもみなさんに得るところがあればと思って、お話させていただきます。

 私はいま、民主党の選挙対策委員長という立場にあります。簡単にいいますと、衆議院にはいま300の小選挙区がありますが、その次期公認候補を選ぶ責任者ということです。前回の総選挙で民主党は107の小選挙区で勝利しました。比例区と合わせて単独で過半数を確保するには、小選挙区で170議席を獲得しなければなりません。そうでないと政権奪取ができません。つまり私の仕事は107を170に増やすことなんです。私は政権交代でしか日本の政治はよくならないと思っていますので、自分なりの使命感でやらせていただいております。

 前回の参議院の選挙で、民主党は自民党を6議席上回ったこともありまして、いまは候補希望者が殺到しています。その中で候補者を絞り込まなければなりません。この間もある先輩議員の方に、立候補をやめるよう説得したのですが、「君はぼくの人生を奪うのか」といわれました。選対委員長というのは生殺与奪の権を握っている反面、そういう泥をかぶる仕事でもあり、その第一線に立ってやっております。

 私の家は細々と日本酒を造って売る酒屋です。親には家業を継ぐよういわれていましたが、はたしてそれが自分の適性に本当に合うのだろうかと考え、悩みながら学生時代を送っていました。ある時、偶然に松下幸之助さんが書いた「塾長講話録」という本を手にしました。非常に興味がわいて、松下政経塾の門をたたいたのです。松下政経塾に入らなければ、若くして政治家を志すことはなかったと思います。

 松下政経塾に入ってよかったなと思うことが3つあります。1つは現地・現場主義です。経済の勉強をしたいといったら、いきなり広島県にある三菱電気の子会社へ行けといわれました。22歳の頃です。3カ月間何をしたかと言うと、朝一番に出社して、掃除をして、あとはひたすら梱包作業をやっていました。それで塾に帰ると、これからの日本経済はどうなると思う、と聞かれるわけです。大学院風の勉強も少しはしましたが、ほとんどは現場研修でした。2つ目は、プラス発想ということです。松下幸之助さんは「雑用というものはない」といっています。そこから何かを学んでやると思っていれば、それは雑用ではなくなるという主張ですね。ものの見方というのは、どの角度から見るかでまったく違ってきます。プラス発想は、どんな仕事にも大事なことではないかと思います。3つ目は、小島直記さんという伝記作家と出会い、彼の指導を受けながら、佐藤一斎の「言志四録」とか、三宅雪嶺とか、学生時代には読まないような古典をよんだことです。これが私の転機になりました。尊敬する政治家はと聞かれると、石橋湛山とチャーチルと答えますが、この2人を知ったのも小島先生のおかげです。

 政治家になることについては、本当に悩みました。家業のこともあって、家族は大反対でした。熟慮して、熟慮して、お祈りまでして、26歳のとき福島県の県会議員に郡部から立候補したのです。私の選挙区には2万軒の家があります。一年かけて、私はその全部をまわりました。農村ですから、東京の10万軒に匹敵すると思います。そして当選し、3年後には衆議院に転じて当選します。これは運もありました。伊東正義さんという大平総理が亡くなったときに臨時の総理大臣をやった方が引退され、後援会の一部が私に出馬要請してくれました。みなさんに言いたいのは、「運というのは努力をしている人に偶然という橋をかけてくれる」という映画の台詞がありましたが、運も実力のうちだと思います。努力しない人に運はついてきません。

 実は、2回目の選挙で私は負けました。でも、俗にいう比例復活で入ることができました。負けたのは本当に悔しかったです。本音のところ、比例復活を返上しようと思いました。でも、私を応援してくれた人たちが素直に喜んでいるのを見ると、返上できなかったんです。このときの悔しさをバネに活動した結果が、その後の順調な当選につながっていると思っています。松下幸之助さんは経営で何がいちばん大切かと聞かれて、人間を知ることだと答えています。選挙は勉強になります。究極の人間学だと思います。

 政治家と官僚の決定的な違いは、選挙を経験しているかどうかです。少なくとも政治家のほうが人間や現場を知っています。政治家が政策の方向性を決め、最終的な決断をするのは当然だと思います。

 当然、私たちは、政権を奪った後の政権運営のあり方についても準備をしています。例えば、いま小泉さんのいうことと、自民党がいうことが違うので、三位一体改革の問題はじめ諸課題が解決できないでいます。学問的には政府と政党の二元構造といいます。これは小泉さんのリーダーシップとは別に、政治システムの問題も若干あるのです。我々が政権を取ったら、幹事長も政調会長もみんな無任所大臣にして、与党との調整に当たってもらおうと考えています。また、官邸のあり方もリーダーシップを発揮できないような仕組みになっていて、改善の余地があります。さらに、企業のヒモ付きではないシンクタンクの養成なども急務です。 私は学生時代から、何か世の中の役に立ちたいと思っていました。いまも、人を幸せにする幸せを感じながら仕事をしたいと思っています。でも、政治ですから、場合によっては人を不幸にすることもあり得ます。だから、いまやっていることが、歴史的な評価に耐えられるかどうか、それをいつも検証しながら仕事をしていきたいと思っています。

                                      (90分講座より抜粋)